作成日: 06/12/05  

 記録映画『掘るまいか?手掘り中山隧道の記録』



 中越地震2周年を迎えて、以前観た映画『掘るまいか?手掘り中山隧道の記録』を思い出しました。旧山古志地区の人たちが、太平洋戦争期の中断を挟んで16年かけてツルハシ、くわ、スコップ等のみの手掘りで中山隧道という旧長岡市に通ずるトンネルを掘った事実を記録した映画です。まさに「昭和の青洞門」です。中越地震直後の自主上演会では、山古志地区復興のためのカンパもしました。この映画を観てからしばらくしてテレビで、旧山古志地区の人々が避難所から去るというニュースを観ました。他の避難所の片づけはボランティアによるものが多かったそうですが、旧山古志地区の方々は片づけを自分たちでして去って行かれました。地区で助け合って生き延びる、という豪雪山間地の伝統の根強さを改めて感じました。
 記録映画といっても当時のドキュメンタリーフィルムを編集して、ナレーションや新たな映像を加えたものではありません。建設作業に参加した方の証言とそれに基づいた村の青年による再現映像によって主に構成されています。このトンネルは1949年から、国道291号線新中山隧道開通の1998年まで、陸の孤島旧山古志地区と外界を結びつけていました。中越地震でも壊れなかったそうです。現在通行禁止ですが、再開通を求める運動もあるようです。
 映画の内容には感動しましたが、少しだけ気になるところがありました。この映画は、新潟県に出向(新潟県土木部長!)した旧建設省のお役人が手掘り中山隧道の話を聞いて興味を持ったことをきっかけに制作が推進されたそうです。全国の浄財と多数のボランティアを募って。よい映画だと思いますが、「イラク人質バッシング」「自己責任論」が広がった時期に観たせいか、「自助努力のすばらしさ」の強調が、「そこまで出来ない弱者の切り捨て」に繋がることを若干危惧しております。



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