作成日: 06/11/29  

女性映画監督第一号、第二号

Macで作成再開第一号 


女性映画監督第一号、第二号 
 

9月にNHKBS放送で新藤兼人「ある映画監督の生涯」という映画を観ました。関係者のインタビューと溝口映画の映像を組み合わせて溝口健二の生涯を追った記録映画です。以前『映画監督』(溝口=菅原文太、田中絹代=吉永小百合、監督市川崑)という映画を観て、溝口健二の生涯や田中絹代との関係に関心を持っていたので、興味深く観ました。
 映画のテーマとはずれますが、「ある映画監督の生涯」でインタビューを受けていた関係者の一人坂根田鶴子(さかねたづこ)という女性を観て、ピンときました。村上もとかの『龍』の主人公龍の妻田鶴のモデルといわれる日本映画史上初の女性監督ではありませんか。映画の中で溝口の「スクリプター」と紹介されていましたが、助監督に相当するのでしょうか。田中絹代の回想によると、田中が初めて溝口と組んだ『浪速女』の役作りの資料として沢山の文献を風呂敷包み一杯に入れて田中に届けにきたスタッフが坂根だったとか。このエピソードは『映画監督』の中でも印象深いシーンだったので、それが坂根だったと知って驚きました。そして女性監督2人目は田中絹代。偶然テレビで田中が監督した『流転の王妃』を観たことがあります。いかにも低予算映画なのですが、力強い演出で、同じ題材を扱った大作『ラスト・エンペラー』や常盤貴子、竹野内豊主演のテレビドラマ『流転の王妃』よりも感動しました。私がリアルタイムで知っている田中絹代といえば『前略おふくろ様』の老母や『サンダカン八番娼館』の元からゆきさんでしたが、やさしそうな温顔の奥にある芯の強さに心打たれました。
 田中が映画を監督したことにより一時溝口との仲が疎遠になったと云われます。薄倖の女性を情感豊かに描くことで定評があった溝口は、田中が監督の分野に進出したことが許せなかったのでしょう。女性に理解がある振りをしても、いざ女性が「男の領域」に踏み込むと途端にヒステリックになる男っていまでも沢山いますよね。今よりずっとずっと大変な時代に女性映画監督第一号、第二号になった、坂根、田中は本当にすごいと思います。坂根は、断髪できびきびした言動で、いかにも「戦前の先進的職業婦人」という風情の方でした。坂根田鶴子の映像を見られただけでも、この「ある映画監督の生涯」を観た価値がありました。




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